アロマトリートメントは、良い香りに癒されながら、手の温もりと心地よさを感じることができます。実は、手の皮膚の薄さはティッシュ一枚分と同じくらいなので、温かさだけではなく、患者さまの不調を敏感に感じることができます。
手を使い、触れ合いながら心と身体の調子を整えるアロマトリートメント。本日はその魅力をたっぷりとご紹介します。
タッチングのパワー
アロマトリートメントは、「嗅覚」と「触覚」にはたらきかけます。
この手で触れる「触覚」のはたらきかけをアロマトリートメントでは、“タッチング”といいます。日本語で怪我をしている人に施すことを「手当てする」といいますが、まさにそれが、“タッチング”です。
医学の祖とも呼ばれるギリシャのヒポクラテスは「調子の悪いところに手をあてると、その手に不思議な力が宿り、その力が痛みや不必要なものを剥がし取っているかのようだ」とタッチングのパワーについて語っていて、「医師は、学理とともにマッサージを習得せよ」とも述べています。
いかにこのタッチングの効果が優れているかを長きに渡って提唱してきたのです。
それから2000年以上の時が経っていますが、「手当て」タッチングのパワーが優れていることは科学的にも証明されつつあるのです。
温かみのある手で全身をゆったりとしたリズムでほぐすアロマトリートメントは、緊張状態にある筋肉を柔らかくしていきます。緊張している神経をゆるめることによってリラックス効果が生まれ、つい眠ってしまう人もいるくらいです。
その心地の良さは「嗅覚」で感じ取る香りにもありますが、手の温かみやそれが触れ合う「触覚」も重要な部分です。植物オイルを使用してマッサージを施すので、肌が感じる「触覚」もますます心地よいものとなります。
また、肌には「C触覚繊維」という神経線維があります。これは、一定の速度で撫でられたときに心地よいと感じる神経です。赤ちゃんの背中をさすったり、頭をナデナデすると喜んだり、眠くなったりするのと同じ原理です。
C触覚繊維は1秒あたり5センチほどの速度で触れると最も良い反応を示します。
呼吸や血圧などの生命に関わる部分でもある脳幹、感情を担う扁桃体、自律神経やホルモンのバランスに関わる視床下部などにも届きます。さらに大脳皮質の一部、前頭皮質の一部にも届き、身体だけではなく、心の部分にも良い効果をもたらします。
C触覚繊維のある場所は、皮膚の有毛部のみで、とくに顔とひじ下に多く存在しています。そのためアロマトリートメントは、顔や腕にすることでより高い効果を感じられるといわれています。
アロマトリートメントの効果
このように身体全体に刺激を与えることで、ホメオスターシス(体温や免疫力を一定に保つはたらき)やアロスタシス(ストレスを受けたときの変化を元に戻そうとするはたらき)を一定に保つことができます。
タッチングの心地よさは、自律神経の乱れやホルモンバランスの乱れを上手く調整し、自然治癒力を高める効果に期待できます。
また、自己の身体感覚も覚醒されるといわれています。これにより、自己肯定感が増すなど、自分の心のポジティブさを引き出すことができます。
皮膚と脳の関係性
タッチングの刺激は、皮膚から脳へと繋がっています。身体の内部をコントロールするだけではなく、感情や記憶、理性などにも大きく関わる部分ですので、まさに心身ともに癒やすことができます。
私たちは、受精卵が細胞分裂繰り返し、胚葉ができることで形を成していきます。つまり、同じ胚葉から、脳も皮膚もつくられているわけです。皮膚の一部が脳となり、脳の一部が皮膚ともいえるわけです。
全身の皮膚を刺激することは、脳を含め、心身全体を刺激することになります。「目に見える脳」と呼ばれるくらい皮膚と脳には密接な関係があるため、アロマトリートメントは、まさに脳を刺激できる大切なケアともいえるのです。
全身で感じる心地よさを脳にも届け、心身に良い効果をどんどん取り入れていきましょう。