睡眠の重要性と不眠症

睡眠は私たちの生存に欠かせないものです。近年、睡眠の研究分野ではかなりの進歩が見られます。まだすべての機能が解明されているわけではありませんが、身体の疲れを癒すだけでなく、脳の健康にも非常に重要であることが分かってきています。例えば、睡眠中に成長ホルモンが分泌され、免疫力が高まり、体内組織が修復され、日中の情報や記憶が整理・統合されたりしています。これらはすべて睡眠中に行われているのです。

レム睡眠・ノンレム睡眠

睡眠は大きく分けると、レム睡眠ノンレム睡眠に分けられます。この2つは、それぞれの段階で身体と脳がどのような状態にあるかによって、区別されています。レム睡眠は、脳が活発に記憶の処理、整理、保存を行っている状態です。急速な眼球運動(Rapid Eye Movement)があることが特徴です。一方、ノンレム(non-REM)睡眠中は大脳が休息している<と考えられ、このタイプの睡眠は心身の疲労回復に不可欠だといわれています。

人が眠りにつくと、最初にノンレム睡眠の状態になり、すぐに最も深い睡眠に入ります。その後、徐々に眠りが浅くなり、1時間前後でレム睡眠に移行します。さらにノンレム睡眠の深い眠りに移行した後、またレム睡眠)に移行し、眠りの深さが浅くなります。このパターンは1サイクル1時間半程度で、一晩に3~5回起こります。眠り始めの3時間は眠りの深い段階が優勢ですが、夜が更けるにつれてレム睡眠の時間が徐々に長くなっていきます。

このようなサイクルが正常に働いている場合は良いのですが、様々なことが原因で、うまく動かなくなる場合があります。これが不眠症です。あまりに症状が重い場合は、日常生活に支障をきたし、社会活動が難しくなる場合もあります。ここからは、そんな不眠症のメカニズムと対処法について見ていきましょう。

意外と知られていない、不眠症の定義

不眠症とは、精神的・身体的なトラブルのために十分な睡眠がとれない状態のことで、思いもよらないことが原因となっていることもあります。一時的な不眠は誰にでもあることですが、生活リズムの乱れやストレスによって、寝つきが悪くなったり、眠りにくくなったりする状態です。実は、この段階ではまだ不眠症ではありません。不眠症とは、「睡眠が十分にとれず睡眠不足であるために日常生活に支障をきたしている状態」を指します。不眠症の症状は個人によって大きく異なりますが、主に「寝つきが悪い(入眠障害)」「朝早く目が覚める(早朝覚醒)」「夜中に目が覚める(中途覚醒)」「ぐっすり眠れない(熟眠障害)」の4つに分けられます。ただし、これらの症状が複数ある方もいらっしゃいます。

不眠症と自律神経機能の関係

実は、不眠症の最大の原因は自律神経の乱れにあります。
自律神経には、交感神経と副交感神経がありますが、この2つの神経の働きが狂うと不眠症を引き起こします。

自律神経

脳や全身を動かすために働く神経を交感神経といいます。
反対に、休息や回復ができる状態にするのは、副交感神経の役割です。
良質な睡眠をとるには、後者の副交感神経が優位になる必要があります。
「よく寝ること」が病気や体調不良の回復に良いとされるのは、睡眠と副交感神経が密接に結びついているからです。
つまり、病気やケガを治しやすい状態にするためには、副交感神経が活発になり、正しく機能する必要があるのです。

自律神経の働きの乱れは、不眠症の直接的な原因であることが多く、誰でもいつでも発症する可能性があります。
自律神経は、私たちが生き続けるために、体を自動的に調節する役割を担っています。
例えば、体温調節や心臓の鼓動、内臓の働きを自分でコントロールすることはできません。
しかし、自律神経は全身の臓器や機能を自動的にコントロールする役割を担っており、そのおかげで私たちは生き続けることができるのです。

自律神経のうち、運動、仕事など人間が活動的になれるように身体を調節するのが交感神経で、逆に落ち着くために優位になるのが副交感神経です。

通常、夜眠るときに優位になるのが副交感神経です。副交感神経が働くことで、心身がリラックスして回復に適した状態になります。しかし、逆に交感神経が活発になると、身体は活動モードに入るため眠れなくなり、この状態が続くと不眠症になります。

自律神経の乱れはストレスが原因

交感神経が活発になるのは、ストレスが大きな原因であるといわれています。
私たちは子供の頃から、動物的・本能的な行動をコントロールするように教育されます。
大人になってからも、仕事の都合で限界まで働いてしまったり、嫌なことから逃げたりできない場合もあります。
本能的行動を抑えようとすると、筋肉は自然と緊張状態になります。
そして、筋肉にストレスがかかると、脳はこれを「生命の危機」と解釈してしまうのです。
生命の危機が迫っているのなら、熟睡している場合ではありません。つまり、眠るべき時間になっても、副交感神経ではなく交感神経が優位になってしまうのです。

ストレス

自律神経失調症も不眠も、根本までたどるとストレスに行きつくのです。

したがって、実は不眠そのものが問題なのではなく、自分の本能を抑え込んでいる状況が不眠を引き起こしていると言えます。別の言い方をすると、副交感神経が最大限に活性化するのを妨げているのです。

交感神経の活性化と不眠の関係

交感神経・副交感神経

睡眠中の体内で交感神経が活性化してしまうことで、次のような現象が起こります。

ストレスを感じると、その影響を緩和するために、脳の視床下部にあるストレス中枢から「副腎」に「ストレスに対処せよ」という指令が送られます。
指令を受けた副腎皮質は、コルチゾールと呼ばれるホルモンを分泌し始めます。
抗ストレスホルモンであるコルチゾールには、抗炎症作用、免疫抑制作用、血糖上昇作用があり、ストレスがかかった状態でも脳と身体が正常に機能するように身体を調整する働きがあります。

コルチゾールの分泌は交感神経の刺激を伴い、その結果、脈拍も血圧も上昇します。つまり、脳を活性化させ、体の活動を活発にして、ストレスから心身を守れるようにするのです。

しかし、自律神経が乱れ、睡眠時にコルチゾールが分泌されるようになると、本来回復すべき時間である睡眠中に、脳や身体が覚醒状態になってしまいます。

このようなメカニズムで、「眠れない」「寝たはずなのに眠い」といった、いわゆる不眠症の症状が出てきます。

不眠症の根本原因は自律神経の乱れ、ひいてはストレスにあることが、お分かりいただけたでしょうか。

東洋医学の理論では、五臓六腑(肝・心・脾・肺・腎)の異常が万病の根源であるというのが基本的な考え方です。
ストレスで体が緊張すると自律神経が乱れ、体内の「気」「血」「水」の流れが悪くなり、内臓が正常に働かなくなってしまいます。
この内臓の異常が、「寝付けない」「眠れない」「どれだけ寝ても眠い」「夜中に何度も目が覚める」といった不眠症の原因となるのです。
不眠症を改善したい場合は、不眠症を引き起こしている自律神経の乱れを整え、寝る時に副交感神経が優位になるようにする必要があります。そのためには、ストレスをできるだけ軽減し、同時に副交感神経が活性化するような施術を受けるのも効果的です。

深い睡眠

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